2020年度中学入試 男子校を占う(海陽中、名古屋中、東海中、南山中)


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2020年度中学入試 男子校を占う(海陽中、名古屋中、東海中、南山中)

シリーズ私立中講座

2020年度中学入試 男子校を占う(海陽中、名古屋中、東海中、南山中)

2020年入試まであと約3カ月、受験生は追い込みの学習に一層熱が入る時期となった。2019年度入試を受けて、来年度入試はどんな状況が予想されるだろうか。今回はまず男子校の動向を学校毎に見てみよう。

目次
  1. 海陽中等教育学校
  2. 名古屋中学校
  3. 東海中学校
  4. 南山中学校男子部

海陽中等教育学校

この地区で中学入試が最初にスタートするのが海陽中。12月に特別給費生入試、年明けに入試Ⅰ、入試Ⅱ、さらに来年度新設された入試Ⅲも実施される。注目されるのは、海陽中はこの3年間で入試科目が次のように変動していることだ。

<海陽中 入試科目>

2017年 4科目入試(国・算・社・理)
2018年 3科目入試(国・算・理)
2019年 3科目(国・算・理)と4科目(国・算・社・理)選択入試
2020年※ 3科目(国・算・理)と4科目(国・算・社・理)選択入試

※2020年度の入試Ⅱ・Ⅲの入試科目は国語・算数必須、社会と理科から1科目選択の3科目入試。

そのため各試験の志願者数もこの影響で上下し、特別給費入試、入試Ⅰは次のように推移した。

<海陽中 特別給費>

  入試科目 募集定員 志願者数 受験者数 合格者数 実質倍率
2017年 4科目 20名 377名 376名 27名 13.9倍
2018年 3科目 20名 403名 402名 63名 6.38倍
2019年 3・4科目
選択
20名 356名 355名 65名 5.46倍

<海陽中 入試Ⅰ>

  入試科目 募集定員 志願者数 受験者数 合格者数 実質倍率
2017年 4科目 60名 402名 395名 200名 1.98倍
2018年 3科目 60名 340名 326名 232名

1.41倍

2019年 3・4科目
選択
60名 373名 364名 268名

1.36倍

2018年度入試は3科目入試になったことから、特別給費は3科目入試が主流の関西圏からの受験生が増加したものの、入試Ⅰでは4科目入試が主流の東海圏からの受験生が減少。2019年度は選択入試になって東海圏の志願者がやや復活したが、全体として減少傾向となり、実質倍率も下がることになった。ただ、海陽中の現中1の在籍生は91名で、120名の定員でも、ある一定の学力レベルがなければ合格を出していないことから、志願者減になっても入試難度が下がることはなかった。

2020年度入試は、入試Ⅲが新たに実施されるが、首都圏の主だった入試後の受験生を対象にしたもので、受験生も大きく増えることは考えにくいことから、2019年度入試の流れを受けたものになると予想される。

しかし、今年の9月に名古屋と東京で行われた説明会ではこれまでにない多くの参加者数となり、今春、科学の甲子園で中学校と高校が史上初のアベック優勝して、マスコミでも取り上げられ、海陽中への関心が高まっていることから、2020年度入試では志願者増の可能性もある。

 いずれにしても全寮制の学校であるため、受験生と保護者ともに、寮生活を正しく理解して、親子ともども子離れ、親離れする覚悟を持って受験する必要がある。

名古屋中学校

2020年度中学入試 男子校を占う(海陽中、名古屋中、東海中、南山中)

この地区で1000名以上の志願者、受験者を確保しているのは、男子校の名古屋中と共学校の滝中、愛知中しかなく、男子校で1300名以上の受験者がいる中学校は全国的にも珍しく、それだけ人気が高い中学校と言える。その人気を受けて、来年度、確実に入試難度が上がることが下記の入試データから読み取ることができる。

<名古屋中 入試データ>

  募集定員 志願者数 受験者数 合格者数 入学者数 実質倍率
2017年 240名 1341名 1320名 848名 246名 1.56倍
2018年 240名 1395名 1374名 859名 270名

1.60倍

2019年 240名 1395名 1361名 851名 298名

1.60倍

入試データの入学者数を見ると、定員240名に対して、昨年が270名、今年は298名になっており、来年度もし同じような状況になると、教室の収容人員を越えてパンク状態になってしまう。そのため、入学者数を定員通りにする必要があることから、今年の入学者数から約60名減らすような合格者数の出し方となる。その結果、合格者数が800名を切る可能性が高く、名古屋中の第一志望校の生徒で、ボーダー付近の学力の生徒は、昨年度以上の学力が求められる。といっても、ボーダー付近は1点、2点差で受験生が何十人とひしめく状況のため、いわゆるうっかりミスをなくすこと、また男子は字や数字をいい加減に書いて失点してしまうことがあるため、「得点できる問題は確実に得点する」「数字や字は丁寧に書く」ことを意識して学習を進めることが大切だ。

また、次のここ3年間の合格者平均点を見ると、2019年度の算数と理科の点数が低く、おそらく来年度は2018年度レベルに戻ると予想される。また、科目配点が傾斜配点で国語と算数が各100点、理科と社会が各50点のため、国語と算数で合格者平均点以上を目標にした学習が不可欠になる。

<名古屋中 入試データ>

国語 算数 社会 理科 合計 ボーダー
2017年 67.2点 65.9点 32.1点 37.7点 202.8点 165点
2018年 69.7点 66.2点 35.9点 35.8点 207.6点 171点
2019年 66.4点 54.3点 36.1点 24.9点 181.7点 142点

 尚、名古屋中学校は公立中から入学してくる3年コースに、2024年度、女子部設置を検討されている。中高一貫コースはあくまでも男子校を貫くとのことだ。

東海中学校

東海中学校

この地区の中学入試を牽引している東海中だけに、大きく変動することなく、安定した入試状況になっている。入試データを見ても例年同じような数値になっており、来年度以降も今年度と同じような入試が想定される。

<東海中 入試データ>

  募集定員 志願者数 受験者数 合格者数 入学者数 実質倍率
2017年 360名 1006名 934名 401名 359名 2.33倍
2018年 360名 998名 939名 393名 358名

2.39倍

2019年 360名 975名 911名 401名 363名

2.27倍

国語 算数 社会 理科 合計 ボーダー
2017年 66.4点 62.6点 78.9点 70.9点 278.7点 249点
2018年 65.8点 60.8点 75.9点 74.2点 276.7点 249点
2019年 56.0点 60.1点 76.7点 68.2点 261.0点 234点

教科のデータを見ると2019年度入試では特に国語の合格者平均が10点近く下がり、難化傾向となった。記述問題が多いことと、大問二の論説文の内容を対応させて、大門三の物語文の記述問題に答える新傾向の問題が出題されたことが要因として挙げられる。大学入試改革を受けて、今後このような新傾向の問題は、東海中に限らず他中学校でも出題が増えることが予想されるため、幅広い視野を持って問題を考える学力、さらに記述力は欠かせない。

国語の解答用紙を見ると記述の解答欄が多いことに圧倒される受験生もいるため、全問全て答えるというより、数問は書けなくてもかまわない、というぐらいの気持ちで臨んだ方が、意外と問題に丁寧に取り組むことができる。合格へのプレッシャーは勉強への原動力になるが、強すぎると実力発揮を妨げることもあるため、リラックスできる力を意識すること、入試に満点は必要ないことも意識することだ。

また、今年は理科の平均点が下がったが、社会と理科の合格者平均点は例年、国語と算数と比べて高いことから、この2科目の点数が取れなかった場合、国語と算数で挽回しようとすると過去の問題レベルからなかなか難しい。そのため、まず社会と理科で確実に得点する学力が必要だ。

東海中は今年度、国公立大学の合格実績が過去最高、国公立大・医学部医学科の合格実績は12年連続全国トップになっていることから、県外からの受験生が今後増えることも考えられる。

南山中学校男子部

南山中学校男子部は昨年に新校舎が完成し、新校舎効果により、男子校の中でこの3年間、唯一志願者数、受験者数、実質倍率が上昇。今年は志願者が100名、受験者は79名増となり、実質倍率も2.90倍に達している。東海中と同一日に入試を実施しながら、このような人気ぶりは、新校舎だけではなく、私服で通学する自由な校風、1学年200名の少人数で高い大学合格実績を出していることが理由に挙げられる。また、南山中学校男子部は系列の南山小学校からの進学者もいるため、実質の募集定員が160名~170名になることも、高い実質倍率につながっている。

<南山中男子部 入試データ>

  募集定員 志願者数 受験者数 合格者数 入学者数 実質倍率
2017年 200名 633名 544名 218名 214名 2.50倍
2018年 200名 648名 550名 215名 207名

2.56倍

2019年 200名 748名 629名 217名 205名

2.90倍

各科目の合格者平均点を見ると、全科目200点満点のため、受験者平均点と合格者平均点の差が大きく、特に算数の差が大きいことから、算数の1問のミスが大きな差となってしまうため、細心の注意を払って解くことが必要になる。例年、算数は30点以上の差があり、毎年作図の問題も出題されるため、コンパスを正しく使える学習は欠かせない。

<南山中男子部 2019年度 入試データ>

国語 算数 社会 理科 合計
合格者
平均点
143.4点 125.5点 152.0点 140.6点 561.5点
受験者
平均点
122.6点 94.9点 130.6点 123.2点 471.3点
20.8点 30.6点 21.4点 123.2点 90.2点

来年度は新校舎効果もひと段落すると思われるため、これまでと同じような上昇ぶりではなく、志願者数も落ち着き、今年度ぐらいのレベルと予想される。

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