筋金入りの国際性 - 南山中の紹介 - シリーズ私立中⑰
シリーズ私立中講座
南山中は軍部の台頭する時代に創立
この10月から11月にかけて秋の学校説明会が各中学校で開催され、どの中学校でもグローバル教育、国際性の育成、英語指導の重視が強調され、英語の授業やイベント、海外での語学研修、留学制度などが説明されている。現在の国内外の状況からこれらの教育が広く行われているのは当然の流れと言える。しかし、いまから80年以上も前、日本が戦争の道に突き進もうとしている時代に、この国際性を学校教育の理念として打ち出すとなると、相当の覚悟がいることになる。
南山中学校男子部は1937年(昭和7年)に創立された。
その当時は日本の軍部が台頭し、創立の前年は政府転覆をはかったクーデタが起こり、第1回の入学式あとには「犬養首相暗殺」、その翌年には国連脱退、という時代で、外国と仲良くする「国際性」を建学の精神として学校教育を出発することは、相当の勇気、信念が必要だったことが想像される。
現在、南山男子生の国際的活動に目を見張るものがあるのは、この歴史と伝統が背景にあるからこそで、南山中男子部の国際性は筋金入りと言える。
これまで、ノーベル平和賞受賞者の故マザーテレサの講演、長崎で被爆した聖母マリア像の国内初公開の実現、長崎原爆投下後に「焼き場に立つ少年」を撮った元米軍カメラマンの招聘と写真の展示、第二次世界大戦中、負傷した元日本兵からの看護のお礼に送られた板絵の送り主を探しているニュージーランドの遺族を招待して講演会を催すなど、他の学校にはないイベント、活動が毎年行われている。南山中男子部のパンフレットに次のような生徒のコメントが記載されており、南山中男子部に受け継がれているDNAが伝わってくる。
南山に入ってびっくりしたことがたくさんあります。先輩たちの活動がすごいこともそのひとつです。新聞社がテレビ会社が取材にくることは、しょっちゅうで珍しいことではありません。02年、先輩たちは被爆の聖母マリア像を「世界遺産」にしようと計画をたてて活動しました。
服装の自由化
カトリックのキリスト教精神を教育の軸として、1学年200名の男子校で高校募集は行われず、完全な6年間一貫教育の南山中男子部は、現在の南山中女子部、南山小学校、南山大学なども含めた南山学園全体の発祥の学校となる。南山中女子部は同じキリスト教教育の学校だが、校舎は別々で男子部から歩いて5分程のところにある。
南山中男子部のこの国際性以外に他の学校にはない特色として、制服がなく「服装の自由化」が認められているこの地区唯一の学校であることが挙げられる。私服通学が認められたのは最近の事ではなく20年以上もの歴史がある。平成6年に生徒自治会の役員が制服の自由化を求める要望をまとめ、生徒と教師間で議論が行われた結果、先生方の生徒を信頼しようという判断から、翌年服装の自由化が認められ今日まで至っている。20年以上も前にこのような議論が行われた学校、どんな学校がイメージできるだろうか。生徒の自主性を認め、生徒と教師がお互いに信頼し合う、自由な校風の学校ではないだろうか。実際にこの学校を訪問すると、名古屋市東部の八事の閑静な住宅街にあり、インターナショナル的な雰囲気が感じられる。
英語の南山
南山中男子部では英語の教科書として、6年一貫校向けのハイレベルな教科書「New Treasure」を使用しており、中1から高1終了時までに中学、高校で履修すべき文法事項を終える。高3では大学入試に向けた問題演習が行われている。2020年からの大学入試改革により、英語の4技能が、特にスピーキング、ライティングが以前よりも重視されるようになるが、このような議論が始まる前からすでに4技能を伸ばす授業が行われている。
例えば中2終了時までに全員が英語で2分間スピーチができるように指導され、中3時では、論理的に話したり、書いたりできるようになり、希望者に対しては英検対策補習、受験前のサポート、2次試験の面接練習なども行われている。
英語の達成度が低い生徒には長期休暇や授業後、土日などを利用した補充授業があり、このような手厚いサポートができるもの、1学年200名という小規模の学校だからだろう。
中3時にはニュージーランドの現地の学校で3カ月間学ぶターム留学、高1時には夏休みを利用してオーストラリア研修、シドニーの姉妹校からの留学生受け入れも行われている。さらに、カトリックの学校ならではの海外研修として、イタリア文化研修が高1・2対象に行われている。クリスマスの日にヴァチカン市国内での研修、教皇謁見にも参加できる貴重な体験だ。
187名の少数精鋭
このような校風の中、6年間過ごした南山男子生の進路は多岐にわたっている。
今年の卒業生は208名、内南山大へ推薦入学した生徒は21名、残りの187名の生徒で下記の実績は立派だ。
南山大学への推薦枠は50名あるが、理系学部など他大学進学希望者が多くなっている。
<平成30年度 主な大学合格状況>
東京大 | 2 | 京都大 | 3 | 名古屋大 | 10 |
---|---|---|---|---|---|
大阪大 | 1 | 北海道大 | 2 | 東北大 | 1 |
筑波大 | 2 | 千葉大 | 1 | 静岡大 | 4 |
岐阜大 | 4 | 三重大 | 3 | 名古屋工業大 | 11 |
名古屋市立大 | 6 | 大阪府立大 | 2 | 岐阜薬科大 | 1 |
国公立大78名(内現役36名、理系68名。名古屋大は10名中7名が現役)
早稲田大 | 15 | 慶応義塾大 | 11 | 上智大 | 5 |
---|---|---|---|---|---|
東京理科大 | 21 | 明治大 | 16 | 中央大 | 19 |
同志社大 | 23 | 立命館大 | 64 | 関西学院大 | 9 |
南山大 | 50 |
<平成30年度 国公立大医学部医学科 合格状況>
名古屋大 | 2 | 岐阜大 | 1 | 三重大 | 1 |
---|---|---|---|---|---|
高知大 | 1 | 名古屋市立大 | 1 | 札幌医科大 | 1 |
奈良県立医科大 | 1 | 防衛医大 | 1 |
また、注目されるのは、南山男子は大学実績をかせぐための受験はさせておらず、合格者延べ数と実数に大きな差がないことだ。1名がたくさんの合格をかせぐのではなく、多くの生徒が目指す大学・学部を受けており、慶應、青学、ICUのように延べ数と実数が一致するのは大変めずらしい。それだけ生徒が自分の進路をしっかりと考えて受験できるような進路指導が行われていることが分かる。
国公立 | 南山 | 早稲田 | 慶應 | 東京理 | 青学 | ICU | 同志社 | 立命館 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
延べ数 | 78 | 50 | 15 | 11 | 21 | 4 | 1 | 23 | 64 |
実数 | 76 | 40 | 13 | 11 | 17 | 4 | 1 | 19 | 33 |
進学数 | 62 | 27 | 6 | 5 | 3 | 2 | 1 | 8 | 11 |
安心できるデータ
また、一般に大学合格実績は全体の数字だけで、成績順に上位から下位の生徒がどこに合格しているかまで出す学校はほとんどない中、南山男子ではそのデータも公表している。
高2実力テストの順位を基に、合格大学を公表し、このようなデータを明示する学校の姿勢に保護者は安心感を持つのではないだろうか。
- ・ 81番~120番:東北大、静岡大、名古屋工業大、東京理科大、明治大、南山大、立命館大、関西学院大など
- ・121番~160番:名古屋工業大、立教大、南山大、立命館大、関西学院大など
- ・161番~ :群馬大、明治大、多摩美術大、南山大、名城大、立命館大など
国際性、英語教育、私服、自由な校風、少数精鋭、オープンな情報公開、私立中のなかでも独自の特徴があり、東海中と毎年同じ入試日程にもかかわらず、約650名の志願者、実質倍率が約2.5倍になる人気の高さもうなずける学校だ。
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