私立中学はなぜ人気!?私立と公立では教育、教師、設備で差が出る - シリーズ私立中講座② -
シリーズ私立中講座
この記事では以下の内容が書かれています。
- ・東海地区でも、小6人口が減少している中、中学入試の総受験者数が1万2千名を超えている。
- ・公立中へは特に受験勉強することなく進学でき、学費もかからない。しかし、なぜあえて受験勉強が必要で学費も負担しなくてはいけない私立中を小学生は目指すのだろうか。
- ・私立中と公立中の違い。中学入試、学校選択、高校入試の有無により大きな違いある。
- ・私立中では中高一貫教育のため高校入試はなく、系列高校へ進学でき、内申点や高校受験を気にすることなく、中学3年間、学習、部活、学校行事に打ち込むことができる。
- ・また私立中と公立中では、設備の差、教員の差が大きい。
私立中学入試の総受験者数が1万2千名突破
今年2月2日早朝、全国ニュースで「雪のため○○中学は試験開始時間を30分遅らせています」が伝えられる。
2月1日~5日は東京都、神奈川県で中学入試が行われており、雪の影響が全国ニュースで扱われるほど、多くの小学生が私立中を目指している。
毎年1月、2月は、難関校の入試問題や合格発表風景など、中学入試がマスコミで大きく報じられ、大学入試センター試験同様、この時期の重要な受験イベントだ。
この東海地区でも、小6人口が減少している中、中学入試の総受験者数が1万2千名を超えており、下図の愛知県の状況を見るだけでも、多くの小学生が私立中の門をたたいているのがわかる。
【2018年(愛知県)志願者と12歳人口】
なぜ私立中を目指すのだろう。
公立中へは特に受験勉強することなく進学でき、学費もかからない。
しかし、なぜあえて受験勉強が必要で学費も負担しなくてはいけない私立中を小学生は目指すのだろう。
そもそも私立中とは何か。
公立中と何が違うのだろう。
私立と公立は教育・教員(教師)・設備が違う
私立中と公立中の主な違いをまとめると下記のようになる。
それぞれ特色を持ち日本の教育を担っているが、違いを知ってわが子の教育や進路を考えれば、より最良の選択ができる。
【中学・高校入試の有無】
私立中 | 公立中 | |
---|---|---|
中学入試 | ・各学校独自の入試が行われる。 ・小学校が進路指導することはない。 ・入試問題レベルは応用発展レベルの問題も出題され、受験勉強が必要。 ・入試当日の得点で合否が判断され、内申点が影響することがない学力勝負の入試。 |
・入試は行われず、指定された公立中に入学できる。 ・指定された学区の生徒は全員入学できるため、受験勉強は必要ない。 |
学校選択 | ・各私立中の教育内容を比較検討して、自由に選択して希望する複数の中学校を受験できる。 | ・学区にある中学校が指定され、原則として指定された学校以外の公立中へ進学することはできない。 |
高校入試 | ・中高一貫教育のため高校入試はなく、系列高校へ進学できる。 そのため、内申点や高校受験を気にすることなく、中学3年間、学習、部活、学校行事に打ち込むことができる。 |
・高校入試があり、中学校で進路指導が行われる。 ・いくら学力があっても、内申点が不足していると、希望する高校の受験そのものができないこともある。 ・入試当日の得点だけでなく、内申点も合否に大きく影響することが多い。 ・大半の生徒が夏休み頃に部活を引退する。 |
学区の公立中が荒れているから別の中学校へ進学したい、隣の学区の中学校の方が近いのに通学に時間のかかる学区内の中学校に通わなくてはいけない、ということが公立中進学の場合は生じる。
しかし、私立中はそのような制約は一切ない。
入学したい中学校を選ぶことができ、一旦入学すれば6年一貫教育のため高校受験はなく、高校受験の勉強や内申点確保のために時間がとられることなく、中3でも興味ある内容を掘り下げた学習、部活、海外研修などに専念することができる。
そのため、岐阜県の中津川や三重県の津から、さらに新幹線を利用して滋賀県から名古屋市内の私立中に通学する生徒もいる。
【設立】
私立中 | 公立中 | |
---|---|---|
設立 | ・各私立中の創立者が、それぞれの建学の精神をもとに設立。 | ・学校法に基づき行政によって設立。 |
建学の精神 | ・各私立中によって内容は異なる。 | ・公共の市町村などによって設立されるため同じ。 |
形態 | ・男子校、女子校、共学校、寮のある学校、全寮制など様々。 | ・共学校のみで寮のある学校はほとんどない。 |
どの私立中にも建学の精神がある。
理想とする教育を実践するため、キリスト教や仏教の教え、あるいは実業家が社会貢献のためなど、創立者の様々な想いが建学の精神にこめられている。同じ私立中でも建学の精神が異なれば、教育内容や校風は自ずと違ってくる。
また男子校、女子校、共学校、さらに寮生活の形態があるのも私立中ならではの特色だ。
公立中はどの中学校でも同じ内容の教育を受けられることが主眼となるため、そのような違いはなく、違いがあれば不平等になってしまう。
ところが、私立中はその違いこそが受験生や保護者を引き付ける魅力となっている。
【設備】
私立中 | 公立中 | |
---|---|---|
設備 | ・各学校、建学の精神を具現化した特徴ある校舎になっている。 ・遠方からの通学者のためにスクールバスを運行している学校もある。 ・生徒全員がタブレット端末を持つ、電子黒板での授業などIT機器が充実。 ・複数のグラウンド、温水プール、本格的なトレーニングジムなど、運動設備も充実。 |
・各中学校、設備、校舎に大きな違いはない。 ・都心部の公立中ではスクールバスの運行はほとんどない。 ・全ての教室にIT機器が設置されている学校はほとんどない。 ・グラウンドが複数あったり、トレーニングジムなどの運動設備があるような学校はない。 |
さらに、公立中出身の保護者が私立中を見学して驚くことの一つに、校舎や設備が充実していることも挙げられる。
宗教的な教えが具現化された校舎、チャペル、全面ガラス張りで生徒が語り合えるような広々とした空間、いくつものグラウンドがあり、温水プールや弓道場までもある設備、全教室に設置されたIT機器、コンピューター室、生徒が相談しやすいように工夫されたカウンセラー室など、目を見張るものがある。
私立中を卒業した保護者も、「私たちの時と全く然違う」と驚くほどだ。
【教員】
私立中 | 公立中 | |
---|---|---|
教員 | ・中学生だけでなく高校生も指導。 ・大学入試の受験生の指導経験もある教師が授業を受け持つこともあるため、高校内容まで発展させた授業をすることができる。 ・中学・高校の6年間の成長段階を踏まえて生徒を指導することができる。 |
・中学生のみを指導。 ・高校入試が目標になり、大学入試に向けた高校生を指導することはないため、高校内容まで掘り下げた授業は行われない。 ・中学3年間の成長段階から生徒を指導する。 |
転勤 | ・教員の転勤はないため、生徒は卒業後も母校に相談に訪れることができる。 | ・教員の転勤があるため、卒業生が母校を訪れる機会はあまりない。 |
私立中は6年一貫教育のため高校生を指導した教員が中学生を教えるなど、大学入試まで見通した指導となり、中学校でも高校内容まで掘りさげた指導ができる。
また、中学校で悩みをかかる生徒が高校でどのように成長していくかもつかんでいるため、適切な指導ができるのも私立中教育の優れている点だ。
公立中では高校入試が3年間の学習目標になるため、中学校範囲の学習となり、大学入試の指導を経験している教師はほとんどおらず、中学3年間の成長過程の中で生徒と接することになる。
6年間の長い期間で生徒の成長を見守る教育が私立中にはある。
ハードもソフトも
今回はまず「入試」、「設立」、「設備」、「教員」の違いを挙げたが、百聞は一見にしかず。
毎年春と秋に行われる学校説明会で私立中の校舎や設備を見学すると、その最先端の教育内容に驚かされ、私立中教育が多くの小学生や保護者に支持されているのも納得できる。
次回は教育内容などソフトの部分の違いに注目する。
こちらも「なぜこんなに違うのか」と思うほどの違いがある。
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