女子が動いた - 私立中シリーズ23 -
シリーズ私立中講座
女子志願者 14校中11校が増加
2019年度の中学入試の特徴として、まず女子の活発な動きが注目される。表①は女子校と共学校の女子のみの志願者数のデータとなり、表②は同様に男子のみの一覧で、これらの表から次のことを読み取ることができる。
- ・女子校は6校中5校、共学校の女子は8校中6校、計14校中11校が昨年より増加。
- ・男子校は4校中1校、共学校の男子は8校中3校、計12校中4校が昨年より増加。
- ・男子と比較して女子の志願者増、及び併願増の入試となった。
【表① 女子校・共学校 女子のみの志願者】
2018 | 2019 | 増減 | ||
---|---|---|---|---|
女子校 | 愛知淑徳 | 970 | 1053 | 83 |
金城学院 | 812 | 820 | 8 | |
椙山 | 519 | 527 | 8 | |
聖霊 | 543 | 360 | -183 | |
名女大 | 197 | 527 | 330 | |
南山女子 | 658 | 714 | 56 | |
共学校 (女子のみ) |
愛知 | 371 | 424 | 53 |
愛工大名電 | 87 | 124 | 37 | |
星城 | 85 | 71 | -14 | |
大成 | 168 | 153 | -15 | |
滝 | 692 | 722 | 30 | |
中部大春日丘 | 163 | 187 | 24 | |
名経大市邨 | 51 | 72 | 21 | |
名経大高蔵 | 24 | 53 | 29 | |
合計 | 5340 | 5807 | 467 |
【表② 男子校・共学校 男子のみの志願者】
2018 | 2019 | 増減 | ||
---|---|---|---|---|
男子校 | 海陽 | 928 | 893 | -35 |
東海 | 998 | 975 | -23 | |
名古屋 | 1395 | 1395 | 0 | |
南山男子 | 648 | 748 | 100 | |
共学校 (男子のみ) |
愛知 | 976 | 954 | -22 |
愛工大名電 | 624 | 707 | 83 | |
星城 | 124 | 92 | -32 | |
大成 | 236 | 226 | -10 | |
滝 | 1094 | 1020 | -74 | |
中部大春日丘 | 277 | 276 | -1 | |
名経大市邨 | 70 | 125 | 55 | |
名経大高蔵 | 36 | 75 | 39 | |
合計 | 7406 | 7486 | 80 |
積極的な選択
中学入試では「女子校離れ、共学校志向の傾向」があると言われたが、今年はその逆の流れとなり、さらに共学校の女子志願者が過去5年間で最高値になった学校も何校かある入試になった。女子校、共学校にこだわらずに、何としても私立中へ進学したいという女子の私立中志向の高まった入試となり、特に愛知中、愛知工業大名電中、滝中、中部大春日丘中の増加ぶりが下記の表③④からも読み取ることができる。
【表③ 女子のみ 志願者数の推移】
愛知 | 愛工大名電 | 滝 | 中部大春日丘 | |
---|---|---|---|---|
2015 | ― | 77 | 648 | 140 |
2016 | 380 | 81 | 683 | 148 |
2017 | 394 | 80 | 693 | 145 |
2018 | 371 | 87 | 692 | 163 |
2019 | 424 | 124 | 722 | 187 |
【表④ 男子のみ 志願者数の推移】
愛知 | 愛工大名電 | 滝 | 中部大春日丘 | |
---|---|---|---|---|
2015 | ― | 660 | 981 | 261 |
2016 | 845 | 551 | 930 | 259 |
2017 | 906 | 680 | 1058 | 253 |
2018 | 976 | 624 | 1094 | 277 |
2019 | 954 | 707 | 1020 | 276 |
将来を見据えた選択
ではなぜ女子がこのような増加傾向になったのだろう。
大学入試改革、私立大の定員厳格化、医学部入試での女子差別など、大学入試に関する内容がマスコミでも頻繁に報道され、6年後の大学進学を考える機会が増えたことが考えられる。
また、学校説明会でもその内容の説明会が大半の学校で強調されたことも要因として考えられる。
①難関大学、学部への進学希望
難関大学合格者の実績ランキングでいつも名を連ね、特に医学部医学科などの難関学部にも多数の合格者を出し、学校説明会でも大学入試改革に向けた学校の取り組みが説明されている南山中女子部、滝中への人気が高まった。さらに愛知淑徳中、愛知、中部大春日丘にもその人気が広がった。
②難関大学と系列大学
愛知工業大学名電中は6年後の大学進学の際は系列大学の愛知工業大学への進学が保証されており、一方、昨年名古屋大に4名、今年も4名の合格者を出して、難関大学合格者も出ている。難関大学にも合格者もだし、さらに系列大学への進学も保証されている学校として男子だけでなく女子の人気も高まる。
③理系学部がある系列大学
椙山女学園大と名古屋女子大の看護学部、金城学院の薬学部、愛知学院の薬学部と歯学部に推薦で進学ができる。今年度、椙山女学園中は入学者が募集定員を大きく超えたため1クラス増設、金城学院中の入学者は募集定員を10名超過。看護学部だけでなく管理栄養士の合格率が高い名古屋女子大中の入学者はこの3年間で40名→66名→82名と増加し、一昨年と比較して倍増している。
④私立中の積極的な情報発信
女子校が学校の先生だけでなく生徒も参加する説明会、様々な体験プログラムなど、女子校の教育内容が広く伝わるようになった。また、共学校でも女子生徒の活躍がアピールされ、共学校での女子の活動がより身近に感じられるような説明会になっていた。
今後の動き
では来年度以降、どのような状況が予想されるだろうか。今年、大学入試改革、私立大の定員厳格化の流れを受けて、全国的に大学附属の私立中の人気が高くなっている。さらに今後、大学入試の新テストが間近に迫ることから、それに関連した報道も一層増えてくれば、当然、我が子の将来の大学進学を考える保護者が増えてくる。
その結果、今年度の大学進学を見据えた傾向は来年度以降も続くと予想され、難関大学への合格者を出している、系列大学の評価が高い、理系学部がある学校などの評価はいっそう高まることが予想される。
今後、学校説明会で大学入試改革に向かう学校の姿勢、具体的な対策の説明内容が、来年度以降の志願者数を左右する可能性が高い。その点をしっかりと踏まえて学校説明会に臨む必要がある。
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