中学受験で英語の科目の導入は進んでいく?対策法や取得しておきたい資格などを紹介
シリーズ私立中講座
以前は、中学受験において英語が入試科目に入ることは珍しいことでしたが、ここ数年、中学受験に英語を取り入れている学校が増加傾向にあります。入試科目として英語が導入される背景には、小学校での英語の必修化が挙げられるでしょう。そのほか、大学入試改革やグローバル化が進み続ける社会という点も理由の1つです。
こうした現状を踏まえて、中学入試の対策法も変わりつつあります。英語の対策を立てるために、早い段階から準備を始める親御様も多いでしょう。そこで今回は、中学受験における英語について紹介します。対策法や取得しておくと役立つ資格についても紹介しますので、ぜひご覧ください。
- 目次
中学受験の「英語入試」とは?
首都圏模試センターの発表によると、2021年の首都圏における中学入試で英語を入試科目に取り入れた学校は、143校でした。2014年は15校だったため、年々増加傾向にあることがわかります。一部の学校では、小学校からの英語教育を重視しているといえるでしょう。
英語入試と一括りにしても、各校で出題傾向は異なります。そのため、子供の志望校の受験で、どのような問題が出題されるのかを把握しておくことが大切です。続いては、具体的な例を挙げながら、中学入試の英語について紹介していきます。
得意分野を評価する傾向にある
1990年以前の中学入試は、国語と算数の2教科が主流でした。その中で、御三家と呼ばれる開成中学校・麻布中学校・武蔵中学校や慶應などの難関校は、理科と社会を加えた4教科を実施していたのが特徴です。
近年は、その他の中学校も4教科をメインとしていました。一方で、生徒それぞれが持つ個性や才能を評価する学校も多いです。そのため、4教科のうち任意で教科を選ぶスタイルの学校もあります。
帰国子女入試との違い
中学受験の英語入試といえば、帰国子女入試を思い浮かべる親御様もいるでしょう。帰国子女入試とは、一定期間、海外で生活していた子供を対象にした入試です。対象条件は、各学校によって異なります。
海外生活が長くなれば、英語力や海外経験者ならではの力が身に付きます。一方で、日本語や日本生活で得られる知識は不足していることが多いです。こうした帰国子女特有の弱点をフォローするための制度として、帰国子女入試制度があるといえるでしょう。
一方で、中学受験の英語入試では、日本で暮らし日本の小学校に通ってきた子供たちが、どの程度英語の授業に取り組んできたかを重視しています。
英語入試の種類について
英語入試は、各校によってかたちが異なります。例えば、江戸川学園取手中学校では、これまでの基本となる4教科の入試とは別に、国語・算数・英語の3教科入試を実施しています。3教科入試は、いわゆる帰国子女入試ともいえ、英語が得意な生徒に向けた内容でした。
2022年度からは、4教科入試に英語が追加されることになりました。出題内容は、リスニング問題です。小学校で学んだ内容が出題されるかたちであり、3教科入試の英語試験とは異なるものです。
また、さいたま市立大宮国際中学校と埼玉県立伊奈学園では、英語入試が必須となっています。特に、さいたま市立大宮国際中学校は、そもそも国際教育に重点を置いていることもあり、開校当初から入試に英語を導入しています。両校とも出題内容は、江戸川学園取手中学と同じくリスニングで、コミュニケーション能力を重視する内容です。
英語入試を実施している主な私立中学
学校名 | 試験の名称 | 実施科目 | 英語 |
---|---|---|---|
江戸川学園取手中学校 | 第一回 | 英語 国語 算数 |
英検3~準2級程度 |
昭和女子大学付属昭和中学校 | 本科コースA・B・C グローバル留学コース GA・GB |
英語 国語 算数 |
リスニング リーディング ライティング (いずれも英検3級レベル) ※英検2級取得者は英語試験免除 |
東京都市大学中学校 | 英語1教科入試 | 英語 | 文法 読解 ライティング |
目黒星美学園 | 英語入試 | 英語筆記 | 英語スピーキング(面接あり) |
参考:首都圏模試センター「英語(選択)入試導入校143校一覧<2021年入試>
学習指導要領改訂の影響は?
中学受験で英語入試が取り入れられている背景には、2020年4月に実施された学習指導要領改訂の影響があるといえるでしょう。続いては、中学入試に影響を与えた学習指導要領改訂を踏まえたうえで、中学受験の英語について紹介していきます。
外国語の教科化
改定された学習指導要領では、これまで外国語活動だった外国語を、小学5・6年生から教科化しています。また、外国語活動も小学3・4年生からに早まりました。教科となった5・6年生においては成績の評価対象で、授業内容もリーディングやライティングを加えたものとなっています。加えて、中学校の英語授業につなげていくことも重視されているのが特徴です。そのため、中学入試で英語の科目を導入する学校が増えていると考えられます。
4技能について
文部科学省は、大学入試改革として民間試験の利用を視野に入れており、英語の4技能を見るための入試を2024年から実施する方向で検討しています。そもそも2020年度から実施される予定でしたが、延期されました。
4技能とは、リスニング・スピーキング・リーディング・ライティングのことです。グローバル化が進む現代において、これら4つの技能は、欠かせないスキルだといえるでしょう。中学受験においても、大学入試改革を念頭に置いて、英語の4技能を重視する傾向にあります。
公立中高一貫校や国立の中学における英語入試
2021年度の中学入試で英語を導入した学校は、私立中学がほとんどでした。しかし、この先、公立中高一貫校や国立の中学校の受験でも、英語入試は取り入れられていくと考えられています。国公立の学校では、学習指導要領を踏まえた入試を行うのが前提です。そのため、どのようなかたちになるかはわかりませんが、英語が取り入れられる可能性は高いといえるでしょう。
ただし、小学校の英語教科化と時を同じくして猛威を振るった新型コロナウィルス感染症により、英語の授業に関して、思うように浸透しなかったという側面もあります。そのため、学校によっては、受験生全員に対する英語の導入に関して、まだ早いと考えているところもあるでしょう。どの段階で導入されるかについては、はっきりしないため、適宜情報を確認することが大切だといえます。
私立中学でも英語入試は増加傾向
私立中学だけで見ていくと、2014年からの7年間で10倍近くの数の学校が、英語入試を取り入れていますが、まだまだ国語・算数・理科・社会の4科目入試が主流です。しかし、小学生での英語教育が必修化された今、江戸川学園取手中学校のように、2022年から大胆な入試改革を行う中学校も出てきています。こうした学校に影響を受けて、来年以降、英語入試を取り入れる私立中学は増えてくることが考えられるでしょう。
中学受験「英語」で出題される問題は?
中学受験において英語は欠かせない存在になりつつありますが、そうなると、気になるのが出題される問題についてです。対策を立てるうえでも、出題される問題の傾向を把握しておくことは欠かせないでしょう。中学受験における英語は、基本的に小学校での英語の授業に対する意欲や理解度を見ることを基本としています。そのため、小学校の学習内容に合わせた入試内容であり、その中心として予想されるのは、コミュニケーション能力や積極性、考える力などです。
高校受験で問われるような、ライティングや文法といった難題が出題されることは考えにくいといえます。ただ、学校によって内容が異なるため、事前の調査は行うようにしましょう。
中学受験「英語」は英検取得で優遇される?
英語力といえば、英検をイメージする親御様も多いでしょう。実は、英検の取得級数によっては、中学受験で優遇される可能性があります。どのようなケースで英検が優遇されるのかについて紹介していきます。
英検の級が目安
学校によって、中学受験で必要とされる英語のレベルはさまざまです。1つの目安として挙げられるのが英検だといえるでしょう。実際、英語入試を実施している中学校のなかには、英検の級を目安にして英語科目の難易度を説明している学校もあります。
最難関校の1つである慶應湘南藤沢中学では、英検2~準1級程度と定めています。つまり、大学受験生並みの英語力を求めているということです。こうした極端な例もありますが、2~3級程度の英語力を求めている中学校が一般的です。
英検の取得級数により加点されるケースもある
中学受験の英語入試において、英検の取得級数によって加点されるケースもあります。加点対象となる級数や加点される点数は、各学校によって異なるため、注意が必要です。また、一定以上の級数を持っていれば、英語の試験を免除している学校もあります。多くの場合は、英検3級以上を対象としているのが特徴です。
英検対策で4技能を身に付けられる
中学受験の英語入試で重視されつつある4技能を伸ばすうえで、英検対策は非常に役立ちます。そもそも、英検は4技能を測定するための検定テストです。英検対策を行うことで、必然的に中学受験の対策につながるといえるでしょう。
中学受験の英語対策・勉強法は?
英語入試を含め、多様化する中学受験に備えて、どのような対策をとったら良いのかわからないという親御様は少なくありません。中学受験で出題される問題は、小学校の授業内容が基本となります。そのため、必要以上に焦る必要はないでしょう。以下に挙げるポイントをしっかり押さえておくことで、中学受験対策につながります。
小学校で学ぶ内容を理解すること
中学受験における英語対策として欠かせないのは、小学校で習う英語をしっかりと理解することです。中学受験では、何よりも小学校で習う英語のコミュニケーション能力を重視しています。そのため、子供が小学校での授業に、前向きに取り組むことが大切です。
2023年以降は難度が上がる可能性も
2020年に、小学校高学年で英語が教科となって以降、年々各学校への英語の浸透度が高まってきています。また、2024年には大学入試に関しても、英語の4技能が重視されるものになる予定です。こうした背景もあり、2023年度頃からは、中学受験の英語入試の難度が徐々に上がるといわれています。
加えて、小学校の授業だけでは対応しきれなくなる可能性も考えられるでしょう。実際、小学校高学年で扱われる英単語は600~700程度です。これらの単語を、コミュニケーションを重視する授業ですべて把握するのは難しいといえます。そのため、学校以外の学習で英単語を学ぶことが大切になってきます。
選択制の入試であれば英語の勉強は必須ではない
中学受験の入試は、各校によって形式が異なります。英語の試験を実施する中学校が増加しているとはいえ、多くの学校が選択制を採用しているのが特徴です。選択制では、英語を入試科目の1つとして選ぶことができます。
そのため、一般的な4教科を選べば、無理に英語を受験する必要はありません。ただし、この先、英語を加えた5教科が必須科目になる可能性も考えられます。また、学校によって英語入試を導入する時期は異なります。あらかじめ志望校の情報を早めに入手して、対策を立てることが大切です。
まとめ
中学受験に英語が導入され始め、子供にどのように勉強させれば良いのか悩む親御様もいるでしょう。中学受験における英語はコミュニケーションが中心と考えられます。つまり、小学校の英語の授業を積極的に楽しめる子供にとっては、挑戦しやすい内容だといえるでしょう。
英語入試は始まったばかりのものです。導入している中学校の数もそこまで多くはありません。また、選択制にしている学校がほとんどで必須ではないため、そこまで慌てて考える必要はないでしょう。とはいえ、グローバル化が著しい現代において、英語利用の入試がスタートする可能性はあります。まずは、基本となる国語や算数から対策を始めることが大切です。名進研では、中学受験を対象にしたコースを設けています。新小学1年生から6年生までを対象にしており、志望校に合わせた授業を受けることが可能です。公開説明会も実施しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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