「勉強をしなさい」と言わない代わりに親としてできること
最近では子供に対して「勉強をしなさい。」と言わない方が良いと言われています。
東大生の人は子供の頃に親から勉強をしなさいと言われたという人が少ないという話も聞きます。
しかし、自分が子供の時を思い出すと「勉強をしなさいと言われて嫌だった」、「勉強をしなさいと言われて余計勉強をしなくなった」と思っていた人も多いのではないでしょうか?
だからと言って、家でダラダラと過ごす子供を見たらついつい勉強をしなさいと言いたくなる人も多いと思います。
今回は「勉強をしなさい」と言った場合と、言わない場合の成績や勉強時間の違いなどをベネッセの調査などを元に紹介します。
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- 目次
勉強しなさいという声かけは小学生の親で83.7% 中学生の親で79.0%もの人が行っている
ベネッセの2011年に行われた「第4回子育て生活基本調査(小中版)」の中で、勉強しなさいという声かけは80%もの割合で小中学生の親が行っていることがわかりました。
そのベネッセの調査の中で「勉強をしなさい」と言った場合と言わない場合の勉強時間の差が公表されています。
勉強しなさい」と言って勉強時間を増加させるのは小学4年生まで。
小学5年生から中学生には逆に勉強時間を減少させることもある。
【「勉強をしなさい」と声をかけた場合、声をかけなかった場合それぞれの勉強時間】
声をかけることがよくある | 声をかけることがあまりない +全然ない |
|
---|---|---|
小学1年生 | 38.1分 | 30.9分 |
小学2年生 | 46.4分 | 43.2分 |
小学3年生 | 49.3分 | 43.4分 |
小学4年生 | 59.6分 | 56.3分 |
小学5年生 | 73.1分 | 76.7分 |
小学6年生 | 79.2分 | 69.1分 |
中学1年生 | 70.8分 | 74.6分 |
中学2年生 | 70.6分 | 77.3分 |
中学3年生 | 99.9分 | 124.2分 |
小学1年生では「勉強をしなさい」と声掛けをした方が1日に7分多く勉強をすることがわかっています。
しかし、この傾向が逆転するのが小学5年生で、声をかけられない子供の方が徐々に勉強時間は長くなり始めます。
中学3年生になると「勉強をしなさいと言われる子供」は一日99.9分、「勉強しなさいと言われない子供」が124.2分と24分もの差がついています。
なぜ勉強しなさいと言うとやる気がなくなるのか?
子供の頃、親に勉強しなさいと言われて、嫌な気になった人もやる気がなくなったという人も多くいるのではないでしょうか?
なぜこのようになるのか、それは人は強制的な指示を受けたり、禁止されるとストレスを感じた結果ストレスを解消する行動に出てしまう「心理的リアクタンス(カリギュラ効果)」というものがかかってしまうからです。
心理的リアクタンス(カリギュラ効果)とは
心理的リアクタンス(カリギュラ効果)としてわかりやすい例を紹介します。
お笑いグループのダチョウ倶楽部のネタで上島竜兵さんが熱湯のうえで「押すなよ!ぜったい押すなよ!」と言っているのに、肥後克広さんと寺門ジモンさんが押してしまうというものを見たことがある人もいるのではないでしょうか?
「押すなよと人に言われるほど逆に押してしまう」この例は心理的リアクタンスを知る上でとてもわかりやすいので紹介をしました。
他にも心理的リアクタンスの例として、浦島太郎は竜宮城で乙姫から玉手箱を渡されて「開けないでくださいね」と言われたのに開けてしまう、鶴の恩返しでは家に来た若い娘が機(はた)を織るのでおじいさんおばあさんに絶対にのぞかないでくださいと言ったのに覗いてしまうのも、指示を受けたことと逆の行動を起こしていることがわかります。
人間は本来自分自身で自由に行動したいという欲望を持っており、その本人の欲望を無視して指示や禁止をされるとストレスを感じてしまいます。
そしてそのストレスを解消するために、禁止されている行動を起こしたり指示に逆らうということがあります。
これが心理的リアクタンスです。
ですので、「ゲームや漫画、youtubeばかりしたり見てはいけない」それよりも「勉強をしなさい」と言っていると、子供が元来求めている欲求を無理やり抑える状態となるためストレスを与えることになります。
そしてストレスを解消するために子供が指示に逆らったり、禁止されているゲームなどをしようと行動を起こしてしまうため、親子間で摩擦が生まれることになるのです。
ですのでやりたいこと(遊びやゲーム、漫画など)を辞めさせて、やりたくないこと(勉強しなさいなど)を強制すればするほどストレスを与えることになり勉強をやらなくなってしまうのです。
と言っても「勉強をしなさい」と言わないままでは子供がとても勉強すると思えない方も多いと思います。
では、子供に勉強しなさいと言わずにどんな行動をすればよいのでしょうか?
勉強しなさいと言わずに子供の勉強時間を増やす方法
先程紹介をしたベネッセの調査によると、中学1年生までに勉強時間を伸ばすために高い効果を出すのが「勉強の意義や大切さを伝える」ことと「勉強の計画を一緒に立てる」こととです。
小学6年生では「勉強の意義や大切さを伝える」子供は平均97.7分も勉強をするのに対し、「勉強の意義や大切さを伝えていない」子供は平均65.2分の勉強時間となり30分以上も差がついています。
また、同じく小学6年生で「勉強の計画を一緒に立てる」という行動では、一緒に計画を立てた子供は1日82.6分勉強をするのに対し、一緒に勉強の計画を立てていない子供は53.9分とこちらも30分ほど差がつきました。
勉強の計画をたてる際はまだスケジュールの把握や好きなことに流されやすい子供だけではなく、是非親子で一緒に勉強の計画を立てましょう。
そして目標を立てる際は、目標が達成できるように無理のない計画をたてましょう。
※目標が達成できない→自分は駄目なんだと自己肯定感を下げないように、はじめは10分、30分からでかまいません
徐々に勉強ができると判断すれば、少しずつ時間を増やしていくことをオススメします。
「勉強の意義や大切さを伝える」ことと「勉強の計画を一緒に立てる」ことは子供の勉強時間を増やすためには有用と言えるでしょう。
外発的動機から内発的動機づけに近づくほど自主的に勉強をする
子供は勉強しなさい!と言われても、本人が「なぜ勉強をするのか?」という疑問が残ったままでは人は行動ができません。
少し難しい言葉ですが、人は内発的動機づけと外発的動機づけで行動をします。
【内発的動機づけとは】本人が勉強に興味があり勉強をする、もっと勉強をして高い点数がとりたいなど本人の欲求に沿ったものです。
【外的動機づけとは】それに対し人から命令されるから行動する、ご褒美をもらえるから行動する、成績が悪いと怒られるので勉強するなど周りから与えられた要因で行動をすることを指します。
外発的動機づけよりも内発的動機づけで勉強をする方が、自主的に勉強を続けられ長期的にも成績に良い影響を与えます。
なぜ外発的動機づけが良くないのか、それは人から命令をされるから勉強をするのではそもそも本人の欲求を無視するためストレスがかかりストレスを解消する行動(心理的リアクタンス)を起こしてしまいます。
また報酬をもらえるから勉強をするという理由では、報酬がどんどんと多く大きくなっていく傾向があるため注意が必要です。
そもそも報酬をもらえるから勉強をすることになるので何も報酬がもらえないとわかった場合、勉強をしなくなる可能性も大きいです。
また子供自身に何か要望を聞くなら代償として何かをもらうという、価値観がついてしまうという理由もあり多用することはおすすめできません。
内発的動機づけに近づくためのレベルアップの方法
では、外発的動機づけから内発的動機づけに変わるためにどうすればよいのか?
これは自己決定理論を知ると理解することができます。
自己決定理論とはアメリカの心理学者であるエドワード・デシとリチャード・ライアンが生み出し、その後30年にわたって多くの研究者によって研究されてきた理論です。
動機づけのレベルを見るために、以下の表をご覧ください。
実は外発的動機づけには4段階のレベルがあり、外発的動機づけから内発的動機づけにはうつるためには徐々にうつる必要があるのです。
動機付け | 名称 | 理由 |
---|---|---|
無動機付け | 無動機付け | 「やりたいと思わない」 |
外発的動機付け | 外的調整 | 「人から言われたので仕方なく行う」 「やらないと叱られるから行う」 |
取り入れ的調整 | 「やらなければならないからする」 「不安だからする」「恥をかきたくないからする」 |
|
同一化的調整 | 「自分にとって重要だからする」 「将来のために必要だからする」 |
|
統合的調整 | 「やりたいと思うからする」 「自分の価値観と一致しているから行う」 |
|
内発的動機付け | 内発的調整 | 「楽しいから」「興味がある」「好きだから」する |
勉強に興味があって自主的に勉強をする人以外は、外発的動機づけから勉強が始まります。
学校に行けば宿題がありますし、授業についていくためや学習の理解を深めるために自主的に勉強をする必要があります。
子供自身の内発的動機づけに持っていくには徐々に段階をうつっていく必要があります。
勉強を行うことが最初は言われたら行動するから、やらなければならないからという義務感から行動するに代わり、次に自分にとって重要だから将来のために必要だからと理解したうえでの行動、さらに自分の価値観と一致した行動だからとステップアップをしていければどんどん自主的に勉強をする段階といえるでしょう。
この外発的動機づけの3段階目(同一化的調整)にうつるためには「勉強の意義や大切さを伝える」ということが良いでしょう。
勉強が自分にとって重要 or 将来のために必要ということがわかれば、同一化的調整の段階に移るでしょう。
子供には勉強がなぜ大切なのか?勉強をするのとしないのでは自分の人生にどんな違いがあるのか?などを説明する必要があります。
もし、子供に興味があることや夢があるなら、勉強がそれらにどう影響をするのかなども含めて伝えると子供自身により興味が出るかもしれません。
外的動機づけから内発的動機づけに近づけるために子供の欲求を満たす
さらに内発的動機づけに近づくために必要なことが、3つの欲求(自律性の欲求、有能性の欲求、関係性の欲求)を満たすことです。
1.【自律性の欲求】は自らでどう行動をするか決め、自分で始め自ら終わることを決定できる欲求です。
自律性の欲求 勉強でいえば自分で勉強をしようと決め、勉強の時間でいつ始めいつ終わるかを自分で決定することといえるでしょう。
2.【有能性の欲求】は、自分は優れていたり能力があることを感じ、さらに成長をするために知識を得たり勉強をしたりするための欲求です。
勉強で言えば高い点数をとる、他人よりよい成績である、他の人に詳しく教えることができるなどは有能性の欲求と言えるでしょう。
3.【関係性の欲求】は、他者とつながりを感じ互いに認め合い尊重し合う欲求です。
勉強で家族、学校、塾などでお互いに尊重しあえる関係を求める欲求といえるでしょう。
他にも勉強に対する内発的動機づけを伸ばすためには
子供が学ぶことに興味が出るように、子供自身の興味があること伸ばすのが良いでしょう。
例えば子供自身が漢字が好きなのであれば、漢字にまつわる本などを子供と一緒に買う(自律性の欲求)と子供自身が自発的に勉強をする大きな要因となるでしょう。
さて今回の記事はいかがでしたでしょうか?
子供には勉強をしてほしいと思って、ついつい「勉強をしなさい!」と言ってしまうかもしれませんが、心理的リアクタンスもかかり自主的に勉強をする面から考えればあまりオススメできないことがわかりました。
また「勉強しなさい」ということで、親自身もストレスがかかりますし、子供との不和の原因となることは避けたいですね。
子供自身が将来に渡って自発的に勉強をすることを考えれば、外発的動機づけから内発的動機づけにうつる必要があり子供とよく話す必要があります。
なぜ勉強をするのか?勉強をした場合としない場合はどう変わってくるのか?将来はどうしたいか?など子供と話すことで、子供の自立性を高めることができます。
私は親に「勉強しなさい」的なことを言われたことないんだよね🤔
代わりに「あなたの人生なんだから、勉強しなくてもいい。ただ、それで困ることになっても私は知らない」と言われてた。
自由には責任が伴うものなんだとなんとなく学ばせてもらってたなぁ😄
自分の子にもとやかく言いたくないかな😊
— かなみ👩👧👦自己肯定感高め繊細ママ (@kanami_yuru) April 21, 2020
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